スイスのフィンテック企業、イスラム法準拠のステイブルコインの認証へ

フィンテック・仮想通貨・ブロックチェーンの先進国であり、世界の「クリプトバレー」になりつつあるスイス。
もはや多くのブロックチェーンスタートアップはその環境に惹かれてツークやチューリッヒなどスイス国内に集積するようになっています。
2009年以降、マネロンや脱税防止から金融における規制は厳しくなっているものの、ブロックチェーン産業の振興は成果が出ている現状です。

そのスイスにおいて、イスラム法準拠のステイブルコインが開発され、イスラム法関連の監査企業から認証を受けました。
つまり、「このステイブルコインはイスラム圏で使っても問題ない」とされたのです。

スイスに本社を置くフィンテック企業X8 AGが、イスラム法(シャーリア)に基づくイーサリアムベースのステーブルコインのための認証を受けた
今回認証を与えたのは、シャーリア・レビュー・ビューロ(SRB)と呼ぶ組織
SRBはバーレーン中央銀行の認可を受けたイスラム法のコンサルティング・監査を手掛ける大手企業

12か国に拠点を持つSRBは、サウジアラビア国内における資本市場や株式市場で一定のシェアを誇っています。

ステイブルコインはなぜイスラム法に受け入れられたか

なぜ今回、認証が受けられたのか。

一つ目にはステイブルコインが持つ性質がイスラム法の考えに違反しないこと、二つ目には昨今のイスラム法学者の仮想通貨への考え方の変容、三つ目には昨今のイスラム教圏での経済事情があるとみられています。

理由①ステイブルコインの要素はイスラム法に違反しない

まず一つには、ステイブルコインの「価格安定」「裏付け資産」という要素が、イスラム法学者を安心させることにつながったとみられています。

X8のイーサリアムベースの暗号資産は「ステーブルコイン」であり、7種類の法定通貨と金により裏付けされている。
これにより、一部のイスラム法学者が懸念するボラティリティや投機の過熱が抑えられると考えられている

理由②昨今のイスラム法学者の考え方の変容

ステイブルコインだから”いきなり”受け入れられた、わけでもありません。
ステイブルコインであったとしても法定通貨ではないのです。
本来なら、厳格なイスラム法であれば、受け入れ対象外かもしれないのです。

しかし、実はステイブルコインがあれこれ出てくる以前、イスラム法学者の間では「仮想通貨はイスラム法に違反しない」という見解がぼちぼち出てきていました。

ビットコイン(BTC)については今年4月、フィンテックスタートアップ企業のブロッサム・ファイナンスが、イスラム法の下で「一般的に許容可能」であるとするレポートを公表
イスラム法学者のムハンマド・アブー・バクル氏は、トレーダーは投機目的で購入するべきではないと警告しつつ、デジタル通貨をハラル(許容可能)であると結論

理由③昨今のイスラム教圏での経済事情

また、アメリカとの関係の悪化から、イランやトルコを中心に、経済不安が広がり、国民たちの間で仮想通貨のニーズが高まるようになったことも影響しています。

トルコやイランにおいては通貨危機や経済制裁の影響により、国民が国の通貨に信用を持てなくなる現象が起きており、ビットコインなどの仮想通貨市場に流れ込んでいる

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すずきまゆこ / 946 view

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すずきまゆこ

税理士・ライター。


2017年の1年間、仮想通貨は”投機手段”として知られるようになりました。

しかし、本来は国や組織を通さない決済手段です。

そのため、経済や金融で危機を迎えている国々においては、「安全資産」のひとつとして注目されています。

何のバックグラウンドも持たないまま、人々の信用だけで「貨幣としての価値」を認められるようになった仮想通貨。
今後どうなっていくかをじっくり見守りたいと思っています。

こちらのサイトでは、その仮想通貨をめぐる社会情勢や素朴な疑問を中心にお伝えしていきます。