仮想通貨ブームの次は地域通貨か

2017年の仮想通貨ブームに刺激され、2018年は地域通貨が活性化しそうだという話が出ています。
かつて、小渕内閣の時代に一時的に火が付いた「地域通貨」ブーム。
その後一気に失速し、消滅した地域通貨もありました。

が、ここ最近になって、復活の兆しが見えてきています。

ブームが失速して久しい地域通貨だが、いま、仮想通貨の急成長に刺激され復活しそうな気配がある。
発行・管理のコストが紙の地域通貨や電子マネーなどより安く済む「ブロックチェーン」を利用した地域限定の「地域仮想通貨」が2018年に、続々と旗揚げしそうなのだ。
国内の地域通貨は全部で677件

国内の地域通貨は全部で677件

ここぷろがWebサイトでかつて公表していた「地域通貨全リスト」によると、国内の地域通貨は全部で677件(2017年4月19日現在)。
関東地方の132件、近畿地方の111件が目立ちますが、人口比では中・四国の95件、北陸・甲信越の78件、北海道の49件が健闘ぶりを示しています。

地域通貨の分布状況

地域通貨の分布状況

地域通貨は日本全国に分布しています。
もっとも多いのが北海道の49.
経済が日本全国でもっとも活性化しているはずの東京でさえ、37の地域通貨があります。

見方を変えると、日本円という基軸通貨だけでは地域の経済などの活性化が不十分であるということです。

地域通貨構想の背景には「少子高齢化」「地方の過疎化」

地域通貨構想の背景には「少子高齢化」「地方の過疎化」

地域通貨構想が真剣に検討される背景には「少子高齢化」「地方の過疎化」があります。
子どもが少なく、かつ、生まれたとしてもその子は大きくなると都市部に出て、そのまま帰ってきません。
言い換えると、「以前ほど故郷に愛着を感じなくなった」ことが背景にあります。

地域通貨もいわば「お金」としての要素を持ちます。お金の要素とは一言で言うと「信用」です。信用が成り立つためには、つながりと愛着がなくてはなりません。

地域通貨構想が真剣に検討される背景には、このお金がもつ効果により、地域経済の活性化やつながりの復活、さらには地域貢献の増加などへの期待があるのです。

地域仮想通貨のこれまで

きっかけは小渕内閣の「地域振興券」

きっかけは小渕内閣の「地域振興券」

「地域通貨ブーム」のきっかけは19年前の「地域振興券」でした。

金融危機翌年の1999年4月、小渕恵三内閣が景気浮揚策として6,194億円を予算化し、全国の市区町村に全額国費補助で商品券を発行させたのです。
15歳以下の子どもがいる世帯主や65歳以上の高齢者などに、1人あたり2万円分(1,000円券20枚)が配布された。

賛否両論ありましたが、この出来事が各地域の「地域通貨」構想に火をつけたことは間違いありません。

統計を取り始めた2003年2月22日は260件で、それが2003年末は382件、2004年末は508件と伸びたが、「地域通貨ブーム」は2005年頃で下火になる。2006年末の614件以後はずっと600台のまま。廃止される地域通貨もあるので、2010年末から2016年末までの6年間で13件しか増えていない。

低迷の原因の一つに「発行にコストがかかる」というのがあります。
地域通貨は原則として「紙」で行われるため、その原材料費や印刷代にコストがかかります。
また、いざ作成したとしても誰も使わないなら、通常の小売りと同じく、その地域通貨は不良在庫として残り、損失になるだけです。

しかし、ブロックチェーンの登場により、この問題の解決の糸口が見つかりました。

「デジタルならコスト削減できる」____その意識の変容が、地域通貨構想を再生させることになります。

「仮想通貨概念を地域通貨に」実用化、実証実験が次々と行われる

低迷を続けた地域通貨。
しかし、昨年の仮想通貨ブームに刺激され、「ブロックチェーンを活用すれば地域通貨活性化につながるのではないか」という考えが広まりました。

実験を続けて実際に実用化された「さるぼぼコイン」をはじめ、現在、さまざまな地域や大学で地域通貨の実用化のための試みが行われています。

もっとも成功しているのが「さるぼぼコイン」

日本にも地域仮想通貨の構想がいくつか練られていますが、その中で最速で実用化され、成功しているのが飛騨高山の「さるぼぼコイン」です。
すでにGoogle Playではさるぼぼコインのアプリが配布されています。

実は日本初金融機関発行の電子通貨ということで、全国的にも注目を浴びています。
ブロックチェーンのシステムは使われていて、地方創生、地方活性化に今後期待される企画です。
地域限定で使える仮想通貨「さるぼぼコイン」

地域限定で使える仮想通貨「さるぼぼコイン」

海外などへの送金や投資にはつかうことができません。
感触としてはSuicaなどの電子マネーに近いかと思われます。

また、ビットコインなどは分散管理となっていますが、こちらは中央集権型。
つまり、飛騨信用組合が一元管理しています。

メリットとしては

・二次元コードでカンタン決済
・クレカやひだしん口座からチャージOK
・チャージ時にポイントがつく

といったところでしょうか。

デメリットとして大きいのが「チャージコインに有効期限あり」です。
期限を過ぎてしまうと失効してしまいます。
貯めたポイントがなくなるならまだしも、リアルマネーをチャージして亡くなってしまうのはただの損失でしかありません。

このあたりは改善の余地がありそうです。

実用後の結果「数千万円分のチャージが行われた」

実験を繰り返しながら実用化に至った「さるぼぼコイン」は、実用化のその後どうなっているのでしょうか。

「さるぼぼコイン」の開発に取り組んだアイリッジ FinTech事業推進チームチームリーダーの川田修平さんはインタビューで次のように述べています。

――12月4日のサービス開始後の反響はいかがでしょうか。

川田氏:サービス開始からまだ日が経っていませんが、すでに総額で数千万円分のチャージをしていただいており、早速多くの取引が生まれています。
加盟店数もスタート時には手続きの関係で約100店舗ですが、すでにそれを上回る申込みを頂いておりますので、2017年中には200店舗、今年度中には500店舗に増加する予定です。
さるぼぼコインは決済で得られたコインを好きなタイミングで現金化したり支払いに充てたりすることが可能です。

参考:その他のブロックチェーンベースの地域通貨

今後の課題

ただし、まったく問題がないわけではありません。

見直すべき課題としては「法律問題をどうするか」。
地域通貨は現時点で2013年の仮想通貨と同じく、ほとんど目立ちません。
しかし、ブームに火が付いたとき、その課税上の取扱いをどうするかについて定義をきちんとしておかないと、資産なのか支払手段なのか、仮想通貨と同じ問題を抱えることになります。

解決が難しい問題としては「地域限定という前提」です。
地域の活性化にはつながるものの、それ以外の地域ではまったく意味をなさないのが地域通貨。
人とのつながりを呼び起こすにはよいかもしれませんが、そもそも使用する絶対数が少ないならば、つねに消滅の危機にさらされます。
現在、経済はその地域「だけ」で成り立つものではないのもまた事実です。

この他、ITに疎い高齢者に対してどのようにして抵抗感なく使ってもらうかなどの課題もあります。

定着させるにはブームに依存するのではなくその先を見据える姿勢が必要なのです。

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鈴木まゆ子 / 1368 view

鈴木まゆ子

税理士・ライター。


2017年の1年間、仮想通貨は”投機手段”として知られるようになりました。

しかし、本来は国や組織を通さない決済手段です。

そのため、経済や金融で危機を迎えている国々においては、「安全資産」のひとつとして注目されています。

何のバックグラウンドも持たないまま、人々の信用だけで「貨幣としての価値」を認められるようになった仮想通貨。
今後どうなっていくかをじっくり見守りたいと思っています。

こちらのサイトでは、その仮想通貨をめぐる社会情勢や素朴な疑問を中心にお伝えしていきます。


Twitter: mayu_suzu8


この他、ZUU Online, マネーの達人などで税務・会計を中心に解説しております。


2017年11月20日、TOKYO FM「クロノス・プラス」にて、仮想通貨関連について解説いたしました。