マイニング事業がロシア国内で活況を迎える

世界的に仮想通貨市場が冷え込む中、唯一ロシアでは事業展開に熱くなっています。

かつての中国で仮想通貨規制が強化されたのを受けてなのか、ロシアでは現在マイニング事業が盛ん。マイニングボードなどの関連機器の売買だけでなく、発電所の買収も行われています。

1月24日、海外メディアの匿名取材に答えた香港IT製品流通企業の関係者は、最近、世界的にグラフィックカードの品薄状態が発生している件について、ロシア国内の企業が仮想通貨採掘のために買い占めているという理由を挙げた。

グラフィックカードはグラフィックボードなどと並んで自作PCに使われるものです。マイニング専用機器を組み立てるのに役立つことから、昨年から日本でも需要が高まっています。

「最近、ロシアがグラフィックスカードを大規模に仕入れている(中略)ビットコインなど仮想通貨の採掘に力を入れ、世界市場をリードしていくつもりかもしれない」

単にマイニング関連機器の需要が増大しているだけではありません。
なんと発電所そのものを買収する動きすらあるのです。

ロシア経済専門誌「コメルサント」は、最近ロシアの仮想通貨採掘業者がペルミ州の発電所2カ所を仮想通貨採掘場として活用するために購入した事実を指摘。電気料金が安く、気候が寒いためコスト的に優位となるシベリア地域を中心に、採掘産業が活性化していると分析している。

ロシア最大の商業銀行、スイスで企業向け仮想通貨取引参入へ

仮想通貨で盛り上がっているのはマイニングだけではありません。
国内最大の商業銀行であるズベルバンクは、1日、スイスで機関向け仮想通貨取引所を立ち上げることを発表しました。

ロシア最大の国有銀行ズベルバンクが、ズベルバンク・スイスランドAGを通して仮想通貨取引所を立ち上げることが分かった
同行の国際市場主任であるアンドレイ・シェメトフ氏は、ロシアと対照的に仮想通貨取引事業を合法とするスイスを選んだという。

今後、ロシアは取引所を含む仮想通貨の一連事業に関して合法化する法案が発表されましたが、現時点では立法そのものまでには至っていません。

今回の事業は個人投資家ではなく機関投資家向けのサービス提供を目指す。

現時点では海外で仮想通貨取引事業を展開する模様ですが、国内の仮想通貨の合法化が実現次第、国内でも取引所開設に動く可能性は高いものと思われます。

また、これ以外にも、ロシア国内ICOが1億~3億ドルの調達に成功したとのニュースもあります。このICOにはプーチン大統領も関与しているとのことです。

仮想通貨に積極姿勢を見せるロシアの意外性___そのワケは

政府発行の仮想通貨となるクリプトルーブルを法定通貨にするための法案がロシア議会に提出されました。法案には、ロシア連邦民法典の改正案が記載されています。中央銀行や財務省から、発行は急ぐことはないという結論が出されたロシアの仮想通貨でしたが、1月初頭には、プーチン大統領が仮想通貨発行の必要性を改めて表明しています。
ロイター通信は1月25日、ロシア連邦財務省が仮想通貨取引に対する規制を制定する準備を進めていると報じた。仮想通貨を全面的に規制するのではなく、一定の条件下での仮想通貨の取引とICO(仮想通貨を利用した資金調達) を認めるものとなる。

世界中の仮想通貨規制ムードが高まる中、唯一仮想通貨については規制を取りいれつつ、合法化する傾向にあるロシア。
他の諸国と異なり、「危険」「犯罪の温床」の一点張りでバッサリ斬るのではなく、むしろその内容や特質をよく理解した上で、規制すべきところは規制し、取り入れるべきところは取り入れようという姿勢が見受けられます。

なぜ、このような姿勢に転じたのでしょうか。

意図1:「規制を過度に強化すれば犯罪はより根深くなる」

「(仮想通貨の)全面的な禁止は違法なビジネスや資金洗浄、テロ資金への悪用など、犯罪の温床を作り出す」

一つには、マネーロンダリングを含めた犯罪の性質そのものへの理解です。
各国政府は、犯罪を撲滅すべく規制を強化したり禁止を発布したりします。
しかし、過度な規制や思慮のかけた禁止は、産業を衰退させるだけでなく、犯罪をより巧妙に、かつ根深いものとさせます。

映画「アンタッチャブル」で見られるような禁酒法はまさに「過度な規制をかけたがゆえの犯罪の増長」の例です。

現在、世界各国が、ハッキングやマネーロンダリング、テロ資金などの撲滅のために規制強化を呼び掛けていますが、「それがなんであるか」を知らずにむやみに規制をかけることは、むしろ犯罪を助長させることにつながりかねないのです。

意図2:自国のコスト低減及び経済発展につなげたい考え

潜在的な会計上の透明さのおかげで、詐欺の可能性を減らし政府の税収を増やすと見込まれるからだ。

もうひとつには、自国の仮想通貨クリプトルーブルの作成を始め、ブロックチェーンによる行政の効率化など、自国の産業の発展および行政システムの向上につなげたい狙いがあるものと思われます。

先ほど過度な規制は犯罪をかえって助長するといいましたが、これは産業や行政にとっても悪影響しかありません。
本来、有効な要素であるものも、一律規制あるいは禁止することで、採用できず、自国が後進国のまま終わってしまう可能性もあるのです。

さらに、世界の潮流として「キャッシュレス」化が進んでいます。

偽造通貨の防止、行政コストの削減には、仮想通貨の着想とブロックチェーンは活用しがいがあるのです。

意図3:欧米の経済制裁を回避

プーチン大統領が「仮想通貨ルーブル」の発行を検討している当面の狙いは、クリミア併合に端を発するウクライナ危機をめぐる対ロシア経済制裁を回避することにあります。
今やアメリカの最終兵器となった金融制裁を逃れるためには基軸通貨ドルとアメリカの金融システムに頼らない決済手段が必要になってきます。そのために「仮想通貨ルーブル」はもってこいというわけです。

世界を目に転じると、単純に国内だけを考えていることではないことがわかります。
東西冷戦が終わったかのようには見えますが、世界の覇権争いの舞台からロシアは降りていません。
そして、ロシアの通貨ルーブルは、決して国際基軸通貨の地位をもっているとは言えません。
大国ながらも、金融制裁を欧米で講じられれば、かつてのソ連の二の舞をいつでも踏んでしまうのです。

しかし、仮想通貨を自国で発行し、それが流通すれば、その金融制裁の影響を最小限に食い止めることができるかもしれません。
また、国内でビットコインなど他の仮想通貨があれば、北朝鮮のように、「ドルに頼らずビットコインで自国資産を保全できる」かもしれません。

ロシアにとっては、冷戦は今も続いているのです。

まとめ

仮想通貨統制は「うまく」やるもの

仮想通貨統制は「うまく」やるもの

いくつかの視点からロシアの仮想通貨政策を見ると、KGBをダテに経験していないプーチン大統領の凄みを感じます。
犯罪や陰謀にさまざま関わるKGB。
犯罪やテロというものをよく知り、どうしたらいいかを熟知しているからこその「ほどよい規制」と「合法化」なのかもしれません。

現在世界は規制一色で仮想通貨と向き合っていますが、もしかしたらその一点張りはかえって国家そのものの立場を危うくすることにつながるのかもしれません。

仮想通貨のさまざまな要素を取り入れながらも、「うまく」立ちまわるロシアの本音は、おそらく次の1点に集約されます。

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鈴木まゆ子 / 6495 view

鈴木まゆ子

税理士・ライター。


2017年の1年間、仮想通貨は”投機手段”として知られるようになりました。

しかし、本来は国や組織を通さない決済手段です。

そのため、経済や金融で危機を迎えている国々においては、「安全資産」のひとつとして注目されています。

何のバックグラウンドも持たないまま、人々の信用だけで「貨幣としての価値」を認められるようになった仮想通貨。
今後どうなっていくかをじっくり見守りたいと思っています。

こちらのサイトでは、その仮想通貨をめぐる社会情勢や素朴な疑問を中心にお伝えしていきます。


Twitter: mayu_suzu8


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2017年11月20日、TOKYO FM「クロノス・プラス」にて、仮想通貨関連について解説いたしました。