ビットコインなどの仮想通貨が決済手段や投機対象として注目される中、国税庁は1日、運用益などを確定申告する際の計算方法や注意点をまとめ、ホームページで公開した。
取引で生じる利益は原則として「雑所得」にあたり所得税の課税対象になるとの見解を既にまとめているが、市場規模の急拡大や価格高騰を踏まえ、税務上の扱いを明確化することで適正な申告を促す。

この秋、国税庁のタックスアンサーで「仮想通貨は雑所得」として発表されました。
が、それでも納得がいかず「どうにかして譲渡所得として計算できないか」という投資家の声も多数聞こえてきました。

今回のQ&Aは、この課税逃れや不適切な計算を未然に防ぐためのものかと思われます。

具体的な計算方法について

FAQは(1)仮想通貨の売却、(2)仮想通貨での商品の購入、(3)仮想通貨と仮想通貨の交換、(4)仮想通貨の取得価額、(5)仮想通貨の分裂(分岐)、(6)仮想通貨に関する所得の所得区分、(7)損失の取り扱い、(8)仮想通貨の証拠金取引、(9)仮想通貨のマイニングなど――という項目に分け、計算方法を取りまとめた。

実際に国税庁から示された「仮想通貨に関する所得の計算方法」については、PDFが掲示されています↓↓↓

全体として押さえておくべきポイント

全体として押さえておくべきポイント

・仮想通貨関連の所得は「事業所得」または「雑所得」
 ※譲渡所得には決して該当しない
・証拠金取引をしていても、外貨等と違い、雑所得であっても分離課税ではなく総合課税(つまり最高税率55%)
・売却時あるいは使用時が課税時点=分裂しても分裂時には課税は発生しない。分裂により新たに生じた仮想通貨を売却した時が課税時点
・同一仮想通貨を2回以上取得した場合には原則移動平均法(しょっちゅうトレードしている場合には総平均法、ただし次回以後も総平均法で取得価額を計算すること)

ポイント1.仮想通貨関連の所得は「事業所得」または「雑所得」

売買であれ使用(仮想通貨による物品やサービスの購入、他の仮想通貨等の購入)であれ、さらにマイニングであっても

・雑所得
・事業所得

に該当することになります。

なお、雑所得か?事業所得か?の区分については


「それで継続的に自立して生活していくことができるレベルか」

で判断します。

「一定規模の収入が継続して得られること」が、副業が事業所得として認められるための大きな要素です。「相応の労力を要する」、「人や設備を投入している」、「職業として認知されている」、「生活の糧となっている」といった点も基準とされ、総合的に判断されます。

マイニングに関しては当初、「原則『事業所得』」として判断されていましたが…

これは、ビットコインのように大規模投資をしないとマイニングできないようなレベルでのハナシ。

個人レベルでやるものについては、多くの場合、頑張っても月1万円レベルでとてもではないですが生活を維持できるレベルとは言えません。

そのため、アルトコインのマイニングについては、それ「だけ」で生きていけるレベルでないなら雑所得として扱うのが妥当だと思われます。

国税庁のタックスアンサーの回答が出た以降も「どうにかして譲渡所得にならないか」という声が多数聞かれました。
しかし、譲渡所得となるものは原則として、「保有が目的」となる資産が対象になると思われます。
「支払手段である仮想通貨を保有目的で所有するか?」となると、そもそも支払手段そのものの意義が「物品やサービスの交換手段」であるため、保有目的と考えるのは難しいのではないでしょうか。

根拠:所得税法第33条2項、所得税基本通達33-1

雑所得は譲渡所得や事業所得にくらべてメリットは低い

雑所得は譲渡所得や事業所得にくらべてメリットは低い

ストレートに言いますが、雑所得は譲渡所得や事業所得に比べてメリットが低いのです。


・損益通算などができない(損失が出たらゼロ扱い)
・給与所得などと合わせて高い税率が適用される(株式などの売買は20%分離課税)


と言った点がデメリットとなります。

総合課税は、人によっては、単に所得税や住民税の問題だけでなく、国民健康保険税や保育料などにも影響します。

つまり、「雑所得」「総合課税」というだけで生活コストが一気にあがるのです。

ポイント2:信用取引していても総合課税

一般的に自己資本で売買・使用の場合には「雑所得」または「事業所得」に該当することがわかりました。
なお、雑所得であっても事業所得であっても、最終的には他の所得と合算される総合所得となります。税率は最高55%(所得税45%、住民税10%)です。

では、外貨FXや商品先物取引のように、信用取引している場合はどうでしょうか?
雑所得として分離課税20%(所得税15%、住民税5%)なのでしょうか?

答えは、「信用取引であっても、総合課税」です。

仮想通貨は法律上、商品でもなければ金融商品でもないのです。

仮想通貨の定義は、現段階で資金決済法にあるのみです。
その内容は次の通りです。

「仮想通貨とは、次に掲げるものをいう。

(1)物品の購入・サービス提供を受ける場合に、代価の弁済のために不特定の者に対して使用できるもので、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却ができる財産的価値で、電子情報処理組織を用いて移転できるもの

(2)不特定の者を相手方として(1)と相互に交換を行うことができる財産的価値で、電子情報処理組織を用いて移転できるもの

(資金決済法第2条第5項)」

なお、消費税法上の仮想通貨の定義は、資金決済法に依拠しています。

ポイント3:2回以上購入している場合の取得価額の計算は原則「移動平均法」

多くの投資家が悩むのはここではないかと思います。
今回のQ&AのPDFでは、これについても書かれています。

これによれば、「移動平均法が原則」となっています
(翌年以後も継続適用するなら総平均法もOK)

「同一の仮想通貨を2回以上にわたって所得した場合の当該仮想通貨の取得価額の算定方法は、移動平均法を用いるのが相当です。
ただし、継続して適用することを条件に、総平均法を用いても差し支えありません」

■移動平均法とは■

棚卸資産を受け入れるたびに、その時点における受入資産と在庫資産の平均原価を算出し、この平均原価をもって商品の払出単価および在庫資産の価額を算定する方法
移動平均法での平均原価は、棚卸資産を受け入れる都度、受入資産の取得原価と在庫資産の金額との合計を、受入資産の数量と在庫資産の数量の合計で除し、その時点における棚卸資産の1単位あたりの平均原価を算出し、これを払出単価や在庫の評価に使用することになります。
(移動平均法の平均原価の求め方)

平均原価=(受入棚卸資産取得原価+在庫棚卸資産金額)/(受入棚卸資産数量+在庫棚卸資産数量)

ここでは、「棚卸資産」を「仮想通貨」に変えてお読みください。

■総平均法とは■

一定期間ごとに、取得した棚卸資産の平均原価を算出し、この平均原価によって商品の払出単価および期末棚卸資産の価額を算定する方法
年度を単位とする総平均法では、期首棚卸資産と期中取得資産の取得原価の合計を、期首棚卸資産と期中取得資産の取得数量の合計で除し、当該年度の受入棚卸資産の1単位あたりの平均原価を算出し、これを払出単価や期末在庫の評価に使用することになります。
総平均法の平均原価の求め方)

平均原価=(期首棚卸資産取得原価+期中取得資産取得原価)/(期首棚卸資産数量+期中取得資産数量)

ここでも「棚卸資産」を「仮想通貨」に読み替えて解釈してください。

平たく言うと、


移動平均法…仮想通貨を買った都度、取得価額を計算することになるから面倒くさい、でも期中の取得価額をその都度知ることができるのがメリット

総平均法…1年間分の取得価額をすべて足して割って平均を出せばOKだから計算がラク、でも、期中の取得価額を知ることができないのがデメリット


ということになります。
よほどシビアに取得原価を知りたい投資家の方でない限りは、総平均法が適しているかと感じます。

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鈴木まゆ子 / 2235 view

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鈴木まゆ子

税理士・ライター・心理セラピスト。


仮想通貨は現時点(2017年)では投資(というより投機)の手段として着目されています。
しかし、その基礎技術であるブロックチェーンを含め、今後AIとともに、人間の未来をより効率的に、かつ安心できる社会にしていく可能性のあるものではないかと思っています。

個人だけでなく、国としても注目のアイテムなのが仮想通貨です。

こちらのサイトでは、その仮想通貨をめぐる社会情勢や素朴な疑問についてお伝えしたいなと考えています。


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2017年11月20日、TOKYO FM「クロノス・プラス」にて、仮想通貨関連について解説いたしました。