「仮想通貨は分岐点に来ている」

「仮想通貨は分岐点に来ている」


数多くの仮想通貨ニュースの中で、時折、そんな意見を目にします。

現実社会の一つの資産(特に金融資産)として今後浸透・定着していきたいのか。

それとも、難しい技術や特性をよく知る一部のギーク(オタク)のユートピア的な存在でありたいのか。

こう問いかけるITの専門家や金融の専門家がいるのです。

金融庁の規制が「自主規制任せ」であった中で発生した今年1月のコインチェック事件。

そして、金融庁の規制が強化され、次々と登録交換業者に立ち入り検査が入り、行政処分が行われた後の9月17日、Zaifハッキング事件が発生しました。

「仮想通貨市場はもはやスタートアップの出番ではない」

こういった事件の続発から、規制の強化を求める声とともに、「もはや仮想通貨取引はどこかのスタートアップが扱えるものではない」と唱える声も出てきています。

コインチェックやビットフライヤーのような仮想通貨交換業者は、スタートアップ企業として出発した。
スタートアップ企業はハイリスク・ハイリターンを前提とし、イノベーションの波に乗ることで、初期段階では赤字を出してもそれを乗り越えて急成長すること(「Jカーブ」と呼ぶ)を期待されている
大企業では手を出しにくい新規ビジネス分野で、実験的な取り組みの仮説検証を行う存在が本来のスタートアップ企業だ。

スタートアップがひしめき合う中で2017年、仮想通貨はバブルの波に見舞われました。

各企業は「資産の保全」「管理体制の強化」よりも「市場や売上の拡大」を優先。
仮想通貨取引所のCMがTVや車内広告をにぎわせたことは、みなさんの記憶にも新しいところではないでしょうか。

イケイケドンドンでOKだった2017年ですが、2018年1月、コインチェック事件が発生して以降、風向きは急変。

金融庁の手が入るようになってから、仮想通貨取引所にはIT技術よりも「金融機関としての常識」が求められるようになりました。

「金融機関としての常識」が求められるということはこういうことです▼

顧客から預かった資産を厳重に管理し、経営者や社員による内部犯行を含めて犯罪や不正行為から守ることが期待されている。
イノベーションによる急成長よりも、顧客資産の保護や、監督省庁である金融庁が求める規律を守ることが優先されるのである。

こういった”風向きの変化”を理解して…と言っていいかどうか。

事件後、しばらくしてコインチェックはインターネット証券大手のマネックスの完全子会社になりました。

こういった流れを歓迎する声がある一方、「仮想通貨にそもそも重厚な管理体制は必要なのか」という声もあります。

「仮想通貨のトラストレスシステム」と「金融機関の規律」の両立はできるのか

仮想通貨とパブリックブロックチェーン技術は、本来の使い方をするなら、重厚な管理体制を抜きに軽量なビジネス展開を可能にする技術なのである。

仮想通貨はそもそもトラストレスでも動くように設計されています。
カンタンにいうと「人」が介在しなくても、信頼が成り立つように設計されています。
そもそもの哲学はそこにあったのです。

だからこそ、国や組織がなくても決済が可能なわけです。

しかし、仮想通貨が一般社会に浸透するようになってから、その哲学は崩れつつあります。

技術が未成熟な段階で巨額の資金を集めてしまった
仮想通貨交換業者が持っている仮想通貨取引や販売の仕組みは、パブリックブロックチェーンの本来の設計範囲からはみ出している。
私たちはより安全なパブリックブロックチェーンの活用方法を研究し、知見を共有する必要があった

仮想通貨はその価格変動の激しさにより、人々に一攫千金の夢を見させました。
また、ジンバブエなどのような国にとっては安全資産としての意義を持ちます。

しかし、本来の価値はそこではなかったはず。


「人間の組織ではなく技術により信用を構築する」側面だったわけです。


安全資産も投機商品も、二次的なものに過ぎません。

そして、このメリットを引き出したビジネス展開が、規制によって阻まれようとしているという懸念の声が出ています。

現行の規制下で仮想通貨ビジネスを日本で展開しようとすると、多くの場合に仮想通貨交換業の登録が必要とされて、金融機関に準じた重厚な管理体制が求められてしまう。

一見するとこの対策はしごくまっとうに見えます。

しかし、ITの専門家から見ると「ちぐはぐ」。なぜかというと、仮想通貨の流出という悲劇を防ぐのに本当に必要なのは精鋭のセキュリティ技術であって、非エンジニアの重厚な組織ではないからです。

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仮想通貨まとめ編集部の志水 / 12548 view

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鈴木まゆ子

税理士・ライター。


2017年の1年間、仮想通貨は”投機手段”として知られるようになりました。

しかし、本来は国や組織を通さない決済手段です。

そのため、経済や金融で危機を迎えている国々においては、「安全資産」のひとつとして注目されています。

何のバックグラウンドも持たないまま、人々の信用だけで「貨幣としての価値」を認められるようになった仮想通貨。
今後どうなっていくかをじっくり見守りたいと思っています。

こちらのサイトでは、その仮想通貨をめぐる社会情勢や素朴な疑問を中心にお伝えしていきます。


Twitter: mayu_suzu8


この他、ZUU Online, マネーの達人などで税務・会計を中心に解説しております。


2017年11月20日、TOKYO FM「クロノス・プラス」にて、仮想通貨関連について解説いたしました。