USDTは、レートが米ドルに価値が固定されているペッグ通貨である。その性質上、発行企業であるテザー社はUSDTの供給量と同額の米ドルを担保資産として保有している必要があるが、十分な資産を有していないとの疑惑が拡がっていた。

仮想通貨への疑念や不信感を一気に高めた「テザー疑惑」。

仮想通貨市場そのものが崩壊するのではないかといわれる一方、「テザーによる価格操作」を示唆する論文なども発表され、ビットコイン価格は下がりに下がりました。

▼テザー疑惑に関する記事はコチラ▼

テザー社の”米ドル資産による裏付け”報告書が公表へ

そんな中、テザーが第三者によるUSDTの米ドル裏付けに関する報告書を発表しました▼

この報告書はワシントンDCに拠点を置く大手弁護士事務所、Feeh Sporkin & Sullivan LLP (以下、”FFS”) によるもの。
「透明性の最新情報」と題したこの報告書にはテザー疑惑への弁明とFFSの立場の表明が記されています。

本報告書における「市場に出回っているUSDTの総量」「テザー社所有の二つの銀行口座における、同日の米ドル保有残高」は次の通り(2018年6月1日時点)▼

6月1日終了時のUSTDの市場流通総量(テザー社提供:$2,538,090,823.52 USDT

銀行口座1:$1,968,538,584.82 USD (担保権なし)

銀行口座2:$ 576,528,652.00 USD (担保権なし)

合計:$2,545,067,236.82 USD
「FFSは、テザー社の担保権のつかない資産が、2018年6月1日の時点で流通している、完全に裏づけられたUSDTの残高を上回っていることを確信している。」

また、FFSは次のように事務所紹介を行い、その立証が透明性の高いものであることを強調しています▼

「元FBI長官を含む3人の元連邦裁判官によって設立され、米国政府で数十年間にわたる最高レベルでの裁定経験を持ち、ガバナンス、コンプライアンス、ビジネスの公正性に関する事項について幅広い知識と国際的な経験を持つ」

「公認会計士による正式な監査ではない」という批判も

ただし、この報告書は”次善策”にすぎません。
それについてはテザー社もFFSも表明しています。

「FSSは、監査法人でない。このため今回の調査は会計基準のGAAPに基づいていない。口座に関して銀行員が相応の権限を持って情報を提示したという想定に基づいていて、これに関してさらなる調査を行うことはない」

「公認会計士による正式な監査ではない」ことからいまだ疑惑の念を払しょくしていない人も少なからずいるようです。

さらに、次の点についても疑問が持たれています▼

この報告書には、多くの但し書きがあり、「6月1日の残高」に対する証明に限られており
それ以前またはそれ以後、テザー社が発行されたUSDTに対する引当金を担保していることは保証していません。

問題「テザー社は監査を受けたくても受けられない」

本来、公式な健全性の証明を受けるには監査法人による監査が必須です。
日本でも、社会への影響が大きい大会社については、監査法人の監査が義務付けられています。

ではなぜテザー社はそれをしないのか?

それは「監査を受けたくても受けられない」というジレンマがあるからです。

監査法人大手は仮想通貨関連の顧客を取っていない
「監査をしてもらえないのが現状だ。4大監査法人は、そんなリスクを取りたがらない」

ちょっと言葉は悪くなりますが、万が一不正が見抜けないとそれは監査法人の落ち度となります。
テザー社は誠意を示しているかもしれませんが、、、仮想通貨業界全体でしばしば話題となる詐欺や不正などの頻発が、監査法人を警戒させているのかもしれません。

日本でも東芝などの不正発覚で監査を行っていた大手監査法人が痛手を受けるという事象が発生しています。

仮想通貨企業の”情報公開”は日本でも課題

仮想通貨企業の”情報公開”は日本でも課題

この状況に関し、テザー社はこれまでの情報提供不足を反省、「これからも疑念を晴らすべく、社会一般へより開かれた情報公開を行っていく」としています。

ただ、この問題はどの仮想通貨企業においても他人事ではありません。

というのも法規制がない、上場していないといった理由で自社の財務諸表などを公開しない企業がほとんどだからです。

仮想通貨が単なるモノではなく、一定の資産性や金融としての性格を持つ以上、そして投資家保護の観点からも、その財務内容については公開するのが当然ではないでしょうか。

金融庁といった当局の調査を待つのではなく、それこそ「自主的に」、公開していくのが仮想通貨市場の透明性と安心感につながるものと思われます。

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仮想通貨ヲタク清水聖子 / 6412 view

鈴木まゆ子

税理士・ライター。


2017年の1年間、仮想通貨は”投機手段”として知られるようになりました。

しかし、本来は国や組織を通さない決済手段です。

そのため、経済や金融で危機を迎えている国々においては、「安全資産」のひとつとして注目されています。

何のバックグラウンドも持たないまま、人々の信用だけで「貨幣としての価値」を認められるようになった仮想通貨。
今後どうなっていくかをじっくり見守りたいと思っています。

こちらのサイトでは、その仮想通貨をめぐる社会情勢や素朴な疑問を中心にお伝えしていきます。


Twitter: mayu_suzu8


この他、ZUU Online, マネーの達人などで税務・会計を中心に解説しております。


2017年11月20日、TOKYO FM「クロノス・プラス」にて、仮想通貨関連について解説いたしました。