麻生氏「NEMの補償金は課税の可能性あり」

麻生氏「NEMの補償金は課税の可能性あり」

6日、麻生財務大臣が先日のコインチェック事件で流出したNEMの補償金に関する課税について言及しました。
「課税の可能性はある」とのことです。

麻生太郎財務相兼金融担当相は6日、仮想通貨の不正流出が起きた取引所大手コインチェック(東京)が日本円で返金する場合、返金額が顧客の取得価格を上回っていれば所得税の課税対象とする可能性を示唆した。
「預かっている金を返しただけでは(対象に)ならないが、(利益を上げたかの)形による」
賠償金であっても実質「収入の代わり」なら課税の可能性高い

賠償金であっても実質「収入の代わり」なら課税の可能性高い

先日、本サイトでも、盗難されたNEMの賠償金についての課税の可否についての記事がアップされました。
専門家の間でも意見が分かれるところですが、流出時点であれ、賠償金支給時点であれ、補償がなされるならば「収入」として税法上は扱われる点ではほぼ一致しています。
そして、取得価額との差額が利益となっているならば、事業所得あるいは雑所得に該当します。

税法では名目を見ません。実質を見ます。
つまり、「賠償金」という名目はどうあれ、「それがどういうものであるか」が重要なのです。

■参考:NEM盗難の補償金についての課税の可否に関する記事↓↓↓

賠償金に関するこれまでの議論

仮想通貨盗難に関する補償金課税については、これまでさまざまなサイトで税務当局への問い合わせや議論がなされてきました。

仮想通貨の情報サイト「ビットコイン谷」には、国税庁に確認した結果として、「日本円で補償された場合は通常の仮想通貨と同じように雑所得として課税される」「補償金額から購入金額を引いた金額に課税される」「補償金がなければ税金が払えないという場合でも、救済措置はない」などという内容が掲載されている。

また、補償金=収入金額とは考えず、段階を踏んで検討し、補償金は補償金、利益確定は利益確定と考える専門家もいます。

「税務的には、次のような取引の複合として考えられます。

(1)預けてあったNEMが盗難される(流出する)ことにより、その時点の時価で損失額が決定
(2)コインチェックに対する損害賠償請求権が発生
(3)その損害賠償請求権の対価として、円による支払いがされる、


ということです」
「投資家は損害賠償請求権を得ますが、所得税法(9条1項17号)により、一定の要件をみたす損害賠償金等は、損害の補填であり所得ではないなどといった考え方から非課税とされています。このため、今回の円による支払い(補償金)は損害賠償請求権の決済であり、所得ではないと解釈できます。つまり、補償金への課税はされないでしょう」

ただし、単純に「非課税」ではなく、「盗難時に、盗難時の時価で利益を確定した」という風に考えます。

例えば単純化して以下のケースを考えてみましょう。含み益は800円となり、これが雑所得として課税されます。一方、受け取った補償金900円は非課税となります」

・NEMを200円で購入

・時価1000円の時に盗難(流出)

・補償として900円を受け取った

また、別の先生も、ほぼ同じような回答をしています↓↓↓

時価100円前後の預けていた資産が盗難にあい、その一部の弁償を受けるということであれば、財産が当初よりも増えたわけではないので、原状回復として受け取る弁償金は、所得税は非課税と考えられます。
なぜ、約88円ものお金がコインチェックから支払われるかというと、それはその時の時価で100円ほどになっていたコインが盗難にあったことの弁償だからでしょう。

ですから、その時点での時価と取得費との差額である含み益については、雑所得として課税がされるのではないかと。
盗難にあわなければ含み益にはいずれ課税されていたものが、お金を受け取っていながら全く課税がないというのは、筋が通りませんし。
結論からいうと「完全非課税」は税法的に考えても「ない」

結論からいうと「完全非課税」は税法的に考えても「ない」

結論からいうと、どこの時点で課税するかの違いはあれど、「強制利確による課税の可能性は高い」ということです。


理由は2つ。一つは、この賠償金には、収入や必要経費の補填という性質を持っているから。
もう一つは、事業所得あるいは雑所得となるべき棚卸資産(必要経費)についての賠償金を非課税としてしまうと、「取得価額は必要経費として算入され、さらに賠償金を受け取っていながらそれも非課税とされて『二重控除』状態」になり、生活用資産の損害賠償金の非課税とのバランスがとれないからです(生活用動産はそもそも所得計算上の必要経費にはなりません)。

ちなみに、コインチェックの補償金は非課税では?の根拠として取り上げられるのがライブドア事件での賠償金非課税の判決です↓↓↓

所得税法などによると、交通事故や離婚での慰謝料や示談金など心身に受けた損害のほか、「不法行為その他突発的な事故」による損害の賠償金を非課税と規定。今回の判決は、粉飾決算に伴う株価急落を「不法行為による損害」と認定し、非課税とした。
一方、課税対象となるのは、従業員の給料や仮店舗の家賃など必要経費を補填するために受け取る賠償金のほか、商品や車の修理・弁償代、特許権侵害による賠償金など「資産譲渡の対価」に当たるケース。これまで国税側はLD賠償金について、株取得費(必要経費)の補填で課税所得にあたると主張していた。

そもそも、このライブドアでの賠償金課税も、所得区分は「一時所得」でした(あとから課税当局が「雑所得」に変更しようとしてきたらしいですけど。。。)。
つまり、営利目的の資産の譲渡等としての性質はないという点では、原告・被告ともども一致していたわけですよね。

しかし、一方、今回のNEMについてはすでに「事業所得」「雑所得」としての判断が国税庁からなされています。
つまり、「営利目的の売買」であるため、盗難されたとしても賠償金が下りたなら必要経費の補填として課税するのが妥当、と考えるのが王道であるように感じます。

また、損害賠償については、原告の非課税の訴えが取り消されたケースもあります(請求人が和解により取得した損害賠償金名目の金員に係る所得は、非課税所得ではなく、雑所得に該当するとした事例▼ 平成23年12月2日裁決)

これについては、課税の根拠として次のように判決文が下されています↓↓↓

請求人の本件J社株式の譲渡による所得は、営利を目的とする継続的な行為から生じたものであり、株式等の譲渡による雑所得と認められ、本件損害賠償金は、本件J社株式の取得価額の一部を補填するものであることからすると、本件損害賠償金は、請求人の株式等の譲渡に係る雑所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補填する損害賠償金に該当するから、上記の「各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額」に該当し非課税所得には該当しないことになる
営利を目的とする継続的な株式等の売買において生じた損害に対する損害賠償金であることから、営利を目的とする継続的行為から生じた経済的利得として、総合課税の雑所得の金額の計算上総収入金額に算入されることとなる。

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鈴木まゆ子

税理士・ライター。


2017年の1年間、仮想通貨は”投機手段”として知られるようになりました。

しかし、本来は国や組織を通さない決済手段です。

そのため、経済や金融で危機を迎えている国々においては、「安全資産」のひとつとして注目されています。

何のバックグラウンドも持たないまま、人々の信用だけで「貨幣としての価値」を認められるようになった仮想通貨。
今後どうなっていくかをじっくり見守りたいと思っています。

こちらのサイトでは、その仮想通貨をめぐる社会情勢や素朴な疑問を中心にお伝えしていきます。


Twitter: mayu_suzu8


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2017年11月20日、TOKYO FM「クロノス・プラス」にて、仮想通貨関連について解説いたしました。