取引所が潜在的に抱えるリスクを甘く見ていたという点では、監督当局の金融庁も同じだ。
 改正資金決済法によって、取引所に「登録制度」という規制の網をかけることができたのは、昨年4月のこと。それ以前にサービスを提供していた取引所は、すでに多数の利用者がいることもあり、審査による登録が完了していなくても、「みなし業者」として一定期間営業できるという“経過措置”をとった経緯がある。
コインチェックのように、一部の仮想通貨をホットウォレット(オンライン)で大量に保管・管理してしまうようなセキュリティ水準の業者であっても、審査が完了するまでは、営業ができてしまう環境を作り出してしまったわけだ。
コインチェック事件の一因に「金融庁の逃げ腰」あり

コインチェック事件の一因に「金融庁の逃げ腰」あり

コインチェック事件発生以前、金融庁インタビューや姿勢からも「資金決済法はあくまでもマネーロンダリング対策」「取引所同士の自主規制にゆだねる」の回答が繰り返し聞かれました。その「業界まかせ」の体質が、今回のコインチェック事件の一因となったとも言えます。そもそも登録制度についても、実際に審査は行われるものの、ペナルティなどの規制があるわけでもありません。

そもそも、以前のマウントゴックスの事件の際であっても、金融庁は「他人事」の姿勢でした↓↓↓

「仮想上の通貨?そんなもの金融取引に該当しないでしょ。物品の取引なら古物商で警察庁、電子データの取引なら経産省が所管すべき」

 今から4年前、仮想通貨取引所のマウントゴックスで、ビットコインが消失する騒動が起こったとき、金融庁の幹部はそう言ってはばからなかった。
マウントゴックスが取引所を始める前、行政のリーガルチェックを受けに関東財務局を訪れていたことが明らかになっても、金融庁は「火中の栗は拾いたくない」「うちの所管ではない」と散々逃げ回っていたわけだ。

官公庁の本音:「面倒くさいものにはかかわりたくない」

今回のコインチェック事件では金融庁がやり玉にあげられていますが、実はこのような体質は他の官公庁でも同じです。

行政機関の民間業者への事業のOKについてはいくつか種類があります。

その内容によってその縛りが異なるわけですが、「届出」「登録」についてはかなり緩い部分の「OK」です。

仮想通貨「登録」業者、と聞くと、一般に「行政官公庁のお墨付きがついているから安心だろう」と感じるのが一般的な反応かと思いますが…実はこれ、かなり緩い範囲の「OK」に当たります。
その事業内容の違法性や行政関与の必要性に応じ、許可・認可・登録などに分かれます。

行政関連用語:許可・認可・登録の違い

1.許可
許可は、一般に法で禁止した行為を解除して、適法に行為できるようにする行政行為をいいます。例えば飲食店営業の許可、自動車運転免許もこれにあたります。

許可は、申請を受けた行政官庁に裁量(行政官庁のもつ自由な判断の余地)が認められるので、仮に申請自体に不備がなかったとしても申請が拒否される(不許可となる)場合があるところに特徴があります。
2.免許
免許は、特定の資格を持った者に権利や地位を与えるものをいいますが、実は学問上の分類ではないのです。行政法学上の分類でいうと、「許可」か「特許」にあたります。運転免許、医師免許などは、行政法学でいう「許可」、地方鉄道業の免許、漁業免許などは、行政法学でいう「特許」の性質をもちます。

特許は、国民が本来有していない特別の権利や地位などを新たに与える行政行為です。許可と同じように、申請を受けた行政官庁に裁量が認められますが、その裁量の幅が許可よりも更に広いといわれています。

つまり、ドローンが免許制になった場合、許可の性質をもつものか、特許の性質をもつものか分かりませんが、いずれにしても、行政庁の自由な判断の余地が入ることになります。
3.登録
登録というのは、所轄行政機関に書類を提出し、帳簿に登録されれば成立します。許可、免許と大きく違うのは、行政庁の自由な判断の余地が入らないということです。判断をしないから登録までの時間も一般的に早いです。

ただし、登録であっても実質「許可」なものあって、グレーな部分もあります。

登録は登録を希望する者の申請によって行われますが、誰でもよいというわけではなく、所定の資格要件を備えた者でなければなりません。登録後も定期的な検査をはじめ各種の規制に服す必要があります。ただ、免許制に比べれば参入退出が比較的行いやすいといえます。

株式などの証券取引に関しては、以前は証券取引法により免許制度が採用されていました。しかし、金融商品取引法の施行にともない、登録制度に変更されました。

そして、仮想通貨取引業者については「登録制」が採用されました。
証券業界と似ている部分はありますが「歴史がない」「取引所の安全性が担保されていない」という部分ではかなり異なっています。
もしかしたら、本当に投資家保護を考えるならば、許可制にするのが然るべきであったのかもしれません。

そして、実際に、事件発生前、金融庁に対してインタビューが行われたわけですが、基本的に彼らの重要課題は「マネーロンダリングの防止」であり、それ以外については二の次であったようです。

事実、次のような発言が行われています↓↓↓

利用者保護や不公正な取引を防止する観点で、交換業者や関係団体等の業界の中で、自主的なルールを定めようという動きがあるし、またさらに、自主規制機関の立上げに向けて関係者間で議論が行われている。この点について、まずは業界の自主的な取組みで利用者の保護を図っていく必要があると考えられる。

また、この背景には、理解しにくい仮想通貨の仕組みなどに対し、金融庁当局がなかなか積極的になれなかった、という話もあります。

法律の枠組みを超えたサービスが次々に誕生する中で、その中身が理解できなかったり、官庁としての“権益”につながりにくいからなどとといって目を背け、後手に回るような行政を改めない限り、犯罪者集団に付け狙われる心許ない「みなし業者」ばかりが増えていくことになりかねない。
「めんどうくさいものにはタッチしたくない」は官公庁の体質

「めんどうくさいものにはタッチしたくない」は官公庁の体質

これはかなり穿った見方にもなるかもしれませんが、「めんどうくさいものにはタッチしたくない、責任を取りたくない」というのが本音であったのではないでしょうか。
なぜかというと、こういった「登録制度」「届出制度」で済ませるのは、他の業界にも見られるからです。

たとえば、各自治体の管轄である風俗営業関連。
キャバクラやホストクラブのような「風俗営業」に関しては許可ですが、ソープやデリヘルのような「性風俗」に関しては届出制です。
そして、トラブルの多い「投資顧問業」については、財務省において、登録制度となっています。

これについて許可という強い縛りを与えてしまうと、許可を出したその後、トラブルが発生したら行政側に責任追及が及びます。
これを避けるべく「許可」「認可」「登録」「届出」を上手に使い分けているものと思われます。

金融庁の審査が厳格化するか

金融庁自身も過去に規制の空白を放置したことが、騒動の遠因となっていることを認識すべきだろう。

そして今回の事件を受け、単なる登録制度ではなく、事前審査をより強化することになる模様です。

昨年四月に施行された改正資金決済法で仮想通貨取引所には登録制が導入された。取引所としての登録を受けるためには本申請前に業務体制や業務内容が基準を満たしているか金融庁の審査を受ける必要がある。

 金融庁はこの事前審査を厳しくする方針。仮想通貨取引所に対する指針では、顧客の仮想通貨をできる限りインターネットから切り離して保管するといった顧客保護の規定があるが、コインチェックはその規定の順守を怠っていた。
金融庁によると現在、登録を受けている仮想通貨取引所は十六あり、登録申請中のコインチェックのような「みなし業者」も十六ある。みなし業者は法改正前から取引所を運営していた業者で、特例として申請中でも営業が認められている。金融庁はコインチェックを含むみなし業者に対しても、審査基準を厳格に適用していく方針だ。

歴史の浅い仮想通貨業界は、他の金融関連の業界に比べて大分「荒っぽい」業界です。
投資は投機と大して差がなく、また、今回のコインチェック事件で明らかとなったように、あっという間にハッキングされたりすることも。
全財産を投じて仮想通貨の価格の上下に人生を預けてしまうほどの投資家がいるわけですから、他の業界以上により厳しいチェックが必要なはずです。

仮想通貨の支払い手段としての価値はゼロになることがないとしても、このような事件でその本来の価値が既存されることは誰にとってもプラスにはなりません。
今後、仮想通貨が自分の身をまもり、幸せにつなげる手段となるためには適正な行政機関の介入が必要となるかと思われます。


人間の良心だけでなくエゴが渦巻く世の中では、「見えざる手」など、どこにもないのですから。


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仮想通貨まとめ編集部の志水 / 3891 view

鈴木まゆ子

税理士・ライター。


2017年の1年間、仮想通貨は”投機手段”として知られるようになりました。

しかし、本来は国や組織を通さない決済手段です。

そのため、経済や金融で危機を迎えている国々においては、「安全資産」のひとつとして注目されています。

何のバックグラウンドも持たないまま、人々の信用だけで「貨幣としての価値」を認められるようになった仮想通貨。
今後どうなっていくかをじっくり見守りたいと思っています。

こちらのサイトでは、その仮想通貨をめぐる社会情勢や素朴な疑問を中心にお伝えしていきます。


Twitter: mayu_suzu8


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2017年11月20日、TOKYO FM「クロノス・プラス」にて、仮想通貨関連について解説いたしました。