日本企業の会計基準を策定する企業会計基準委員会(ASBJ)は5日、企業が仮想通貨を利用する際の会計ルール案を固めた。
原則的に仮想通貨は期末に時価評価し、価格変動に合わせ損益を計上するのが柱。2019年3月期から企業に適用する方針だ。

今週中に草案を発表し、意見を募集した後、調整を加えるとのこと。大まかな内容は「原則時価評価」に変わりありません。

この2~3年で仮想通貨は大きく日本で関心を集めました。
個人からすると「投機」としてのイメージばかりが先行しますが、企業の事業としては新たな成長のチャンスとして受け止められました。

ビットコイン決済OKとする店舗も急増。保有のビットコインや仮想通貨をどう取り扱うかが焦点になっています。

また、仮想通貨が企業会計の論点となるのは、決済の場面だけではありません。
マイニングなどで得た仮想通貨をどう取り扱うかも課題となっています。

この場合、マイニングした仮想通貨もさることながら、ICOで発行したトークンもどのように評価するのかが会計上の課題となります。
今回のASBJの草案は、あくまでも仮想通貨に関するものに限り、ICOのトークンは次回の課題となった模様です。

具体的な会計処理方法

基本的には「有価証券等」と同じ考え方

基本的には「有価証券等」と同じ考え方

企業会計では、有価証券など金融商品については、原則として時価評価を行うこととされています。
時価評価は株主や取引先などの利害関係者に対する情報開示の一環であり、適正に企業の財産状況や債務返済能力を表すのに有効とされています。
企業が単に事業だけでなく金融商品を取り扱うようになり、2000年以降義務付けられるようになりました。

期末における仮想通貨の評価に関する会計処理

仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、保有する仮想通貨(仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨を除く。以下同じ。)について、活発な市場が存在する場合、市場価格に基づく価額をもって当該仮想通貨の貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理する。
原則:時価評価

原則:時価評価

取引所で扱われているようなコインについては、一律、不特定多数の者の取引により成り立つ時価が存在します。
そのため、時価評価します。
このとき、参考する時価は、その企業にとっての主要取引所(もっとも頻繁に活用している取引所)のものとなります。

差損益計上の際の取得価額はアカウントをみれば分かりますが
「取得時の価格×単位」というふうになりますね。

期末時の時価については、現実には毎秒変化するのが時価ですが、毎秒負うわけにもいかないので、その日の平均時価を使って評価することになるかと思われます。

仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、保有する仮想通貨について、活発な市場が存在しない場合、取得原価をもって貸借対照表価額とする。期末における処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)が取得原価を下回る場合には、当該処分見込価額をもって貸借対照表価額とし、取得原価と当該処分見込価額との差額は当期の損失として処理する。
特例:簿価評価

特例:簿価評価

とはいえ、仮想通貨のすべてが取引所に上場しているわけではありません。
今ある仮想通貨は800種類とも1000種類とも言われています。
開発したばかりのコインなども少なからず存在しています。
そして、それはまだ「時価」と呼ばれるほど頻繁に取引されていないものもあるでしょう。

このような場合には、簿価評価でよいかと思われます。
ただし、取引所外であっても、もし不特定多数の者との取引があり、その中で時価が存在するなら、この場合も原則に則るのが相当かと思われます。

さらに、市場価格がない仮想通貨(多くの場合は取引所に上場していない仮想通貨)については、モノによっては「買ったはいいけどジャンクになった」というものも少なくありません。
その場合には、期末で損失計上することになるかと思われます。
ゼロか備忘価額か、については、保有しているならば備忘価額で(1円でも5円でも)、現実にも処分した場合にはゼロとするのが企業会計上適切かと思われます
(簿外資産は企業の財産評価をするにあたり、望ましいとはいえません)。

ただし、仮想通貨は上場するか否かも含めて変動激しい市場です。
先月出たコインが今月上場、という可能性も否定できません。

この場合は

未上場:簿価(ただし、不特定多数の者の間で相当の数量や頻度で取引される場合は時価)

上場:時価

として評価するのが適切だとされています。

活発な市場の判断基準

活発な市場の判断基準

時価を評価するには、前提として「活発な市場」の存在が不可欠になります。
ここでASBJが提案している「活発な市場」の判断基準は次のようなものです。

「仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者の保有する仮想通貨について、継続的に価格情報が提供される程度に仮想通貨取引所または仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている場合をいうものとする。」

取引所における預かり仮想通貨の期末評価

仮想通貨交換業者は、預託者から預かった仮想通貨に係る資産の期末の帳簿価額について、仮想通貨交換業者が保有する同一種類の仮想通貨から簿価分離したうえで、活発な市場が存在する仮想通貨と活発な市場が存在しない仮想通貨の分類に応じて、仮想通貨交換業者の保有する仮想通貨と同様の方法により評価を行う。
また、仮想通貨交換業者は、預託者への返還義務として計上した負債の期末の貸借対照表を、対応する預かった仮想通貨に係る資産の期末の貸借対照表価額と同額とする。
取引業者の会計処理はちょっと特殊

取引業者の会計処理はちょっと特殊

ポイントは2つです。

・自己所有の仮想通貨と、預かり仮想通貨を分けてBSに載せること
(具体的には仮想通貨A、仮想通貨B…というような表記になるのでしょうか)

・預かり仮想通貨については、負債に計上(市場価格アリ→時価、市場価格ナシ→簿価)

また、単純に預かり資産であり、そこに取引所そのものの営利活動は関係しないので(ホントに預かっているだけなので)、預かり仮想通貨については損益を計上しないこととされています。

今後の課題

マイニングはどう考える?

マイニングはどう考える?

今回、ここではマイニングで取得した仮想通貨については触れられていません。

私見ですが、マイニングで稼得した仮想通貨についても、上記と同じような取扱いになるかと思います。
つまり、市場が存在するなら時価、そうでなければ相対取引による簿価、ということになるのではないでしょうか。
ただし、市場価格が存在せず、単に自社で新規に開発しただけのものについては、ゼロ評価あるいは備忘価額か…になりますが、企業会計の意義を考えると、1円でもいいので簿価をつけてBSに計上するのが相応かと思われます。

ICOについては未解決

ICOについては未解決

今回、ASBJが発表したのはあくまでも使用や保有、売却など市場取引における仮想通貨です。
ICOのトークンをどう取り扱うかについては未解決のままです。
米国証券取引委員会では、「ICOトークンは有価証券に類するものだ」という判断が行われています。
となると、ICOを新株予約権のような感じで取扱うのが妥当なのかもしれません。

市場そのものは急成長していますが、環境整備はこれから…という仮想通貨。

まだ法的な定義は資金決済法のみですが、今後、金融商品の一環としての法的定義(金商法あたりで)がなされれば、一気に会計処理や取り決めがしやすくなるのかなと思われます。

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仮想通貨まとめ編集部の志水 / 16643 view

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鈴木まゆ子

税理士・ライター・心理セラピスト。


仮想通貨は現時点(2017年)では投資(というより投機)の手段として着目されています。
しかし、その基礎技術であるブロックチェーンを含め、今後AIとともに、人間の未来をより効率的に、かつ安心できる社会にしていく可能性のあるものではないかと思っています。

個人だけでなく、国としても注目のアイテムなのが仮想通貨です。

こちらのサイトでは、その仮想通貨をめぐる社会情勢や素朴な疑問についてお伝えしたいなと考えています。


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2017年11月20日、TOKYO FM「クロノス・プラス」にて、仮想通貨関連について解説いたしました。